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今回も螺旋プロジェクト作品のご紹介です。
今回は明治時代のお話で、薬丸岳作『蒼色の大地』。
薬師丸さんは『天使のナイフ』や『友罪』など、映像化もされた人気作品の原作者です。
恥ずかしながら、『友罪』は映画の存在を知っていましたが、小説の方は知らなかったです…。
そして、薬師丸さんの作品も初めてでした。
今作が初の薬師丸作品でしたが、凄くおもしろかった!!
変な捻りやグロテスク、不思議ワールドではなく、読みやすい一冊だと感じました。
かと言って、淡々と話が進んでいくのではなく、
あと少しで上手くいくのに、歯車が合わない登場人物たちが、運命に翻弄される姿にドキドキが止まりません。
また、単なる恋愛ものではなく、友情という言葉では表しきれない、灯と新太郎の少年漫画のような熱いシーンにも感動します😭
- すれ違いの物語が好き
- 単なる恋愛物語は苦手
- 螺旋プロジェクト作品を読んだことがある
あらすじ
蒼い目をもつ灯は青鬼と呼ばれ村八分となっていた。
灯だけでなく、育ての親である爺さんも村で虐げられ亡くなった。
しかし、幼馴染の鈴だけは灯に優しかった。
食べ物をこっそり届けてくれたり、爺が亡くなった時に唯一涙を流してくれた。
爺が亡くなり追われるように村を出た灯は、罪人が集まるとされる鬼仙島にたどり着いた。
そこで、海賊である蒼狼達と行動をともにするが、爺の教えに背く行為に耐えられず、灯は鬼仙島を出ていこうとする。
しかし、ここ以外に蒼い目を持つ者の居場所はない。
呉の海軍兵学校に通う新太郎は、司令官である山神に何故か目をかけられていた。
山神は司令官という新任からしたら雲の上の存在にもかかわらず、新太郎には気さくに声をかけてくれる。
この日も、新太郎は山神に呼び出され官舎を訪れた。
1つは、瀬戸内海にいる海賊を討伐するために国が最新鋭の軍艦を呉に配置するという話だった。
瀬戸内海には海賊が横行しており、船が襲われたり、女子供が拐われたりしていた。
新太郎の母のように。
もう1つは、妹への縁談の話だった。
「たしか妹がいると話していたな」
山神が両手を組んで少し身を乗り出してくる。
「はい。鈴といいます」
薬丸岳作 蒼色の大地
感想(ネタバレ含む)
ここからは若干のネタバレ含むため、まだ読んでない人は気をつけて下さい。
和解への努力に感動
今まで読んだ螺旋プロジェクト作品は、どうしても対立してしまう海族山族に関して、そのまま対立状態で話が組み立てられていました。
しかし、本作は対立してしまう事が嫌で手を取り合い出す様子が描かれていて、これまで海山対立を見てきた者としては凄く嬉しかったです😭
『ウナノハテノガタ』のウェルカセリと同じ気持ちでした。
他作品との繋がりが嬉しい
海族、山族が互いに直感でその存在に気がつくところや、
どちらも凄い悪事を働いているわけでは無いのに周りに翻弄されて対立してしまうところが、
伊坂さんのスピンモンスターの対立構造に少しにていると感じました。
そこも意図していたのか分かりませんが…
飽きがない伏線回収が流石
伏線回収系は伏線が回収されるまでは淡々と話が進むだけで、回収されるまでの助走が長いものも多いです。
しかし、本作はかなり序盤から少しづつ回収され、そしてまた少しづつばら撒かれています。
そのため、飽きることなく最後まで読み切れました。
好きなセリフ
悪いことをすると神様はそいつの心に灯るろうそくの火をひとつ消すんじゃ。
いくつのろうそくが灯っているのかはその人によって違う。
じゃが、悪いことをするたびにろうそくの火をひとつずつ消していく。
代わりに正しいことをすると神様はろうそくの火をひとつ灯してくれる。
中略
自分が生きている間に溜めてきた明かりだけがすべてじゃ。
生きている間に明かりを持たなかった者は真っ暗な闇の中を無限にさまようしかない。
それが地獄じゃ――
なんだか新しい死生観にぐっと来ました
「奇特な奴だ。その女のことを想っているのか」 灯は答えなかった。
彼女への想いは心の中だけにしまっておきたい。
灯の鈴を大切にしている想いが美しい
まとめ
これまで紹介した、螺旋プロジェクト作品のどれか1つでも読み、海山対立に胸を痛めた方は、この作品で心がほっこりするはずです。
是非、読んでみてください。
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