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自分は無価値だ
帰る家もあり、明日食べる事にも困っていない
なんなら、便利な世の中になり、苦労という苦労をしない生活を送ってるにもかかわらず、生きづらさを感じることってないですか?
何者でもない自分、この世で生きる意味って何?と考えてしまいます。
私はよくこの状態に陥ります🥺
「暇だからだよ。暇だから余計な事を考えるんよ。」
本作品の特別付録や解説を読みながら、父の言葉が蘇りました。
時間に余裕があり、解決しなければならない目先のトラブルもない。
誰かに言われたわけでもないのに、悩み苦しむことがあります。
自分はこのままではダメなのではないか?
存在する意味はないんじゃないか?
このまま何もなく死んでしまうのか?
考えなくてもいいことで悩み、自分で自分を追い込んで、自滅していく。
なぜ、こんな悩みを抱くのか?
それを言語化してくれたのが今回紹介する作品だと感じています。
螺旋プロジェクトのテーマ「海族と山族の対立」を「平成」の時代で書き上げた、物語としても面白く、メッセージにも心動かされる傑作です。
20代、30代の同世代の人には是非読んでいただきたい☀️
あらすじ
海族と山族の間に対立が生まれることは、避けられない。
物語の冒頭は、『海と山の伝承』から始まります。
時は現在、植物状態となった友人 南水智也のもとに足しげく通い、目を覚ます日を待ち続ける堀北雄介。
智也の入院する部屋に一日たりとも欠かさず見舞いに来て、思い出の曲を聞かせ、絶対に目が覚めると信じる雄介の行動から二人は特別な関係であること分かります。
雄介が看護師に『智也は自身の”大切な人”と』言っていたように、小学校、中学、大学と月日がたっても二人が離れ離れになることはありませんでした。
そんな二人の幼少期から現在に至るまでが、各章の登場人物の視点で描かれていきますが、
どの時代でも、二人と関わった人が感じる違和感があります。
どうして、あの二人は仲がいいの?
各章の物語が重なり合う時、二人の違和感の真相が明らかになります。
海族の智也、山族の雄介。
冒頭の『海と山の伝承』によれば対立が避けられない、性格も正反対の二人が、どの年代でも一緒にいるのには、ある理由があったのです。
そして、各章の伏線が回収された後、さらなる衝撃の展開が…
雄介!そういう事だったの‼
感想
伏線回収からの更なる展開がアツい
正直、第一章の白井友里子の話は、盛り上がりどころが分からず、一章を読んだのち1か月ほど本作から離れていました。
半ば義務感で第二章に進むと、次第に暗雲が立ち込める展開に読む手が止まりませんでした。
各章の違和感、引っかかりポイントは絶対この後の展開に寄与すると思うと、少々読みずらい章でもワクワクが止まりませんでした。
しかも、各章に込められたメッセージが痛烈に心に刺さります。
伏線を散りばめるための序章なんてことはなく、どの章も大切に心に留めておきたい物語です。
そして、伏線回収が終わったところで最終章は穏やかに締めにかかる小説もありますが、本作はそんなに甘くないです。
”あ~そういう事だったのね~”と落ち着いてからの衝撃の一撃!!
覚悟は決まった。必要なのは、動く身体だけだ。
『死にがいを求めて生きるの』朝井リョウ著
付録、解説まで心にしみる
読み終わった後の興奮のまま、特別付録と解説を読みました。
物語が終わったあとの後書きは、いつもはサラッと読み流すことがほとんどです。
しかし、本作の特別付録、解説は作品の理解度がググっと増してくれます。
付録や解説も、物語の重要な要素とも言えるでしょう。
ともに平成という自己責任社会を生きてきた者同士のピアサポートのような、不思議な手触りの癒やしがあった
『死にがいを求めて生きるの』朝井リョウ著 解説より
誰もがありのままでいいと叫ばれる時代に生きながら自分を誰かと比べ続けてしまう苦しみ、自分で自分の意義や価値をジャッジし続ける行為は、心の内側から腐っていくというか、外から見ても傷の在り処がよくわからないんですよね。
だから、若者が吐露する辛さは時に、甘えのようにも見えてしまう。
『死にがいを求めて生きるの』朝井リョウ著 特別付録より
続いていく物語
面白い小説を読み終えると、”あぁ終わってしまった…”と言うロス感に襲われますよね🥺
次の作品を見つけている間に、本を読む気分が遠のいてしまったり…
しかし、本作品は”螺旋プロジェクト”のうちの1つなので、この作品が別の作品とつながっています。
そう思うと、作品を読み終わってすぐの高揚感を抱えたまま、次の作品を手に取れます。
螺旋プロジェクトと言う、複数の作品で構成された、ひとつの大きな物語を読んでいるため、
まだ話は続いていくのです!
螺旋プロジェクトについては別の記事でまとめますのでお楽しみに〜♥
まとめ
螺旋プロジェクトや、本作の存在については以前より知っていましたが、『海族、山族の対立』『古代から未来までの話』と聞くと、ファンタジー要素の強い物語ばかりなのかと食わず嫌いをしていました。
ただし、『正欲』を読んで、朝井リョウさんの他の作品が気になって仕方がなくなり、本作を手に取りました。
そんな経緯で読んだ『死にがいを求めて生きるの』ですが、素晴らしかったです。
堀北くんみたいな女の子って、いっぱいいるんだよ。
『死にがいを求めて生きるの』朝井リョウ著 特別付録より
この物語は海族、山族の対立の話であり、”雄介が問題児である”のも、”亜矢奈が智也に惹かれる”のも、すべて『海と山の伝説』が原因だという壮大な物語だと思って読み進めていきます。
しかし、亜矢奈のこのセリフで、現実の私たちの生活に、この小説がグッと近づきます。
”なんだ、これは壮大な伝説じゃなくて身近な話だった!”と気づかされました
『海山伝説』というファンタジーから、小説の中で繰り広げられる物語、そして、私たち読者の生きる現実世界がつながっていく。
フィクションを一気に現実の世界へと関連させ、作り話を読んで楽しむだけでは終わらせない、朝井リョウさんらしさ全開の作品です。
自分の存在価値が分からなくなっている人の心を軽くしてくれる作品だと思っています。
是非、手に取ってみてください💐
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